「監察医朝顔2」感染症を扱ったドラマをコロナ禍の今なぜ放映したのか？

フジテレビのドラマ「監察医朝顔2」10話で感染症（狂犬病）を扱った物語が放映されました。

ネットでの反響は大きく、テレビ視聴率も12.4％と第4話以来の高い数字で注目となったのです。

新型コロナウイルス感染者が年明けから急増し、世の中全体が感染症にはナーバスになっているこの時期に「監察医朝顔2」で感染症を扱った物語を、今なぜ放映したのかを考察しました。

「監察医朝顔2」10話の投げかけた2つの問題

10話の中で特に注目されたシーンが2つあります。

・　つぐみが保育園で「つぐみちゃんと遊ぶと病気になる」と友達から言われ、「先生も友達も大嫌い！」と布団を被って泣いて叫んでいたシーン。

・　感染症（狂犬病）にかかり工場の清掃員として作業していた坂口がベルトを外して転落して死亡、妻がお腹の赤ちゃんに感染しているのではないか不安だと話すシーン。

#監察医朝顔
感染症。
保育園でのいじめ。

ドラマでみると
保育園で今、医療関係者の子供の辛さが突き刺さる。

— オルゴール@orugo_ru2020 (@orugoru20202) January 18, 2021

コロナ禍に通じる感染症患者遺体問題
それに医療従事者の家族への風評被害
光子ちゃんとつぐみちゃんの泣き顔に涙が止まらなかった😭😭
胸が苦しい

監察医 朝顔
#10「解剖で怪我・・・感染症と懸命に闘う法医の苦しみ」#TVer #監察医朝顔https://t.co/WhKP1mgwF3

— Readme (@DreamPine3) January 20, 2021

どちらも、感染症への恐怖心が先行して冷静になれない人の弱い部分を正面から描き出していました。

医療関係者に対する「いわれ無き」風評の問題は、現実のこの国でも昨年コロナの感染者が出始めて以来、ずっと続いてきました。

そのため大勢の医療従事者が感染のリスクではなく“家族への世間の人の暴言が理由“で離職したと報道されています。

医療関係者も自分の生活や社会の間違った偏見から身を守る権利があっても良い筈です。

こんな時、私達は拍手を送るだけでいいのでしょうか？

コロナと狂犬病の違いはあれど、感染症がテーマとはタイムリーですね。#監察医朝顔 #録画視聴

— 安倍きゅんなつみ柑♂ (@hello723happy) January 20, 2021

更に感染症に関しては、恐怖のあまり、極度に怖がって正しい判断が出来ないことがあります。

ドラマに登場した坂口や妻がそうでした。

それは、「感染症に対する医療制度を信用していない」ことに起因しています。

「もしかして感染しているかも知れない」と自分が感じたとき、「隔離され満足な治療も受けられずに死んでゆく」のでは？と不安になり検査を避けている人が大勢いるのではないでしょうか？

それを、感染症の専門家たちは「無症状者」と呼び、隠れキリシタンの様に社会に不安を撒き散らす違法者扱いにしてマスコミに登場し、こう発言しています。

「早く、捕まえて隔離しなければ」

対策としては正しいのかも知れませんが、これでは自ら検査を受けて正しく身を処す気持ちに誰がなるでしょうか。

「感染者が入院を拒んだ時には権力は強い勧告や罰を与える権限をもつ法律」にする動きもあります。

ベッドが無く入院などすぐには出来ない（コロナ）の現状で、これだったら検査など受けずじっと家に籠（こも）って「自分が死んだら運命だった」と考える人がいても無理からぬところです。

まさに10話で（狂犬病に）感染し安全ベルトを外してビルから転落した坂口の行動がそれをよく物語っていたのです。

ドラマ制作にとって感染症はリスキーなテーマ

最近、感染症をテーマしたドラマで大きく注目されたのは、2017年夏期に放送された「コードブルー～ドクターヘリ緊急救命～」8話でしょう。

エボラ出血熱を発症した患者に注射した針を、医師・桃山美帆子（戸田恵梨香）が誤って自分に刺してしまうという事故が起こり、美帆子は病室に隔離されます。

そこへ、一般人の恋人がお見舞いに来て容易く部屋へ侵入し、病室で愛の言葉を交換する。という展開でした。

この回は、久々の15％を超える視聴率でドラマとしては好成績だったのですが、視聴者や感染症の専門家からは、「感染症を甘く見るな！」の大批判の渦が巻き起こり、ドラマで感染症を扱う怖さをテレビ局は思い知らされたのでした。

『朝顔』見ながら…
『コードブルー』で戸田恵梨香が注射針を刺して感染症に怯えてた回を思い出した。。。 #監察医朝顔 #志田未来

— SUZ (@mashasy) January 18, 2021

一方、果敢に感染症に向き合い撃沈したと言われるドラマがTBSの2019年春ドラマ「インハンド」です。

もともと寄生虫を研究する紐倉哲（山下智久）がパニックを引き起こす病原体を退治するという物語ですが、そこに架空の感染症も登場。

菜々緒さん演じる厚生労働省の官僚が加わり、現実の感染症対策のお粗末さを訴えながら、危機を脱してゆくストーリーでした。

初回こそ好スタートを切った視聴率でしたが、感染症問題と真剣に向き合い過ぎたため、難しすぎる内容に偏り人気は低迷ずっと1ケタ台に留まり最終回でスレスレ10％に乗せ終了。

しかも、「ブラックペアン」に続き体制批判的内容もかなりあったため、その後、この種のドラマは作れなくなりました。

コロナ禍の今、感染症を扱ったドラマを放映する理由

多くの問題を含むテーマ「感染症」から目を背けているテレビ局のドラマ製作部門がある一方で、批判を顧みず「感染症」に挑戦したフジテレビの意図はどこにあるのでしょうか。

「監察医朝顔2」で描かれたポイントから読み解いてみると、次のことが明らかに見えてきました。

現実に映像に表現されている部分で言えば、もちろん、

• 感染症患者や医療従事者に対する風評被害。
• 感染リスクが正しく伝えられていないことによって起こる誤解。

を描くことにあります。

しかし、それだけでは無いと感じる部分もありました。

それは、朝顔の夫・桑原真也がつぐみに語った。

「何かいう人は、（病気に立ち向かい）頑張っている人を知らない人たちなんだ！」

「だから、（パパとつぐみも）応援しなくっちゃ」

の会話に集約されて描かれていました。

このドラマが伝えたかったことは、応援する気持ちを持てば世の中を支えようと頑張っている人たちに勇気を与えられる。ということだったと思うのです。

感染症に関していわれのない誹謗中傷をうけたつぐみに
桑原くんが語りかけた言葉を全世界の人は胸に刻むべき#監察医朝顔

— Louis (@Louisrui927) January 18, 2021

まとめ

フジテレビが感染症を扱ったドラマを、コロナ禍の今「監察医朝顔2」10話で放映しました。

その理由は、感染症患者や医療従事者に対する風評被害や感染リスクに対する誤解を描くほかに、感染症に立ち向かっている人たちに対する応援の気持ちを伝える意図があったのです。