2019年最大の話題作となったアニメーション映画「天気の子」
2020年5月にはDVD・Bru-layの発売と動画配信が始まり、ブームが再燃していますね。
感動的なストーリーやキャラクターの個性など本作の魅力はたくさんありますが、奥の深い設定の数々も見逃せません。
今回は、劇中に登場する「天気の巫女」の元ネタとなった伝説や伝承について調べてみました。
新海誠監督の大人気作「天気の子」が2020年5月27日0時に待望のネット配信開始。 なんとこのフル動画を今すぐ無料で観られる方法がありますのでご紹介します! あわせてNetflix(ネットフリックス)やAmazon Prime([…]
映画「天気の子」天気の巫女の元ネタは?
映画「天気の子」における天気の巫女とは、天に祈りを捧げることで天気を治療する事が出来る能力を持つ人物のこと。
そして能力を使っていくうちに、巫女の身体は空と同化していってしまいます。
天気の巫女はあくまでも創作ですが、歴史上天気にまつわる様々な伝説がたくさん残されています。
ここでは、特に本作に関連性がありそうなものをご紹介します。
高円寺氷川神社
劇中で穂高と陽菜が訪れた「気象神社」
ここで二人は「天気の巫女」について知るという、ストーリー上とても重要なシーンが描かれています。
そのモデルとなったのが「高円寺氷川神社です」
エンドクレジットにも掲載されているので、多くのファンが訪れているようですね。
日本で唯一の気象神社の歴史
高円寺氷川神社の敷地内には、日本で唯一の気象神社があります。
その歴史は比較的新しく、1944年に大日本帝国軍の陸軍気象部内に造営されました。
気象は戦略上非常に重要視されていて、科学的予報とは別の「心の拠り所」という役割を果たしていたようです。
空襲により社殿は消失しましたが、すぐに再建されたということからも、いかに軍が大切にしていたかが伝わりますね。
戦後はGHQの指示により撤去されるはずでしたが、調査から漏れていたために残存。
そして、高円寺氷川神社の当時の宮司が受け入れたようです。
2003年には社殿が立て直されました。
気象神社の特徴
ご祭神は、八意思兼命(やごころおもいかねのみこと)
八つの気象条件『晴』『曇』『雨』『雪』『雷』『風』『霜』『霧』を司っていると言われています。
また「八意」とは”さまざまな立場から物事を考える事”、「兼」は”兼任”を表していることから、
「一人で二人以上のことができる」という意味を持つ名前の神様で、「知恵の神様」としても有名です。
その知恵を活かして、日本神話における「天岩戸に隠れた天照大神を連れ出すアイデアを出した神様」とも言われています。
以上の事から、ここでは気象にまつわるさまざまな祈祷を承っているようです。
また、「知恵の神様」にちなんで気象予報士の合格祈願に訪れる方も多いようですよ。
また作中では大きな社殿があり、天井には龍の絵が映っているシーンがありました。
残念ながらこちらは創作で、実際の気象神社は人が入れる社殿はないようです。
掃晴娘
陽菜たちが始めた「晴れ女」のビジネス。
必死に祈る陽菜の側で、穂高はてるてる坊主がたくさんついた傘を持って応援します。
そして凪は、てるてる坊主の着ぐるみを着ていますね。
てるてる坊主は日本の文化ですが、実は中国にも同じような文化があります。
それが、掃晴娘(さおちんにゃん、そうせいじょう)です。
掃晴娘とは?
掃晴娘とは、晴天を願うときに家の中に吊るす紙の人形のこと。
しかし現在では掃晴娘の風習は廃れてきていて、日本のてるてる坊主の文化が広く浸透しているようです。
そして、この文化は中国各地に伝わる伝承が基になっています。
掃晴娘にまつわる伝承
中国のある村では、豪雨による水害が発生していました。村に住む少女・掃晴娘は、雨の神である龍神に祈ります。
龍神は少女が自分の嫁になるなら雨を止めると答え、少女はそれを受け入れました。
雨は上がり晴天が戻りましたが、掃晴娘の姿はどこにもありませんでした。
諸説ありますが、上記のような伝承が中国各地で語り継がれてきたようです。
一人の少女の犠牲で大雨が止むという点が、本作の陽菜と非常に似ていますよね。
狐の嫁入り
「天候」と「少女」が大きなテーマとなっている本作。
その二つを結びつけられそうな伝承が「狐の嫁入り」です。
天気雨の事を「狐の嫁入り」という風習とは?
狐の嫁入りとは、日本に古くから伝わる伝承です。
結婚式場が普及する前は、嫁いでいく嫁が夕刻に迎えられ、提灯行列で嫁ぎ先の家に向かう風習が一般的でした。
嫁入り前の娘をキツネに見立てて、怪火のことを「狐の嫁入り」と呼ばれるようになったとのこと。
また、全国各地で天気雨の事も「狐の嫁入り」と呼ぶ風習が残っています。
晴れているのに雨が降っている様子が、狐に化かされているようだということが起源のようです。
また、地方によっては虹を「狐の嫁入り」と呼ぶこともあるようですね。
劇中に登場する池袋(旧豊島村)の七不思議のひとつ
この「狐の嫁入り」は、本作の舞台にもなっている池袋(旧豊島村)の七不思議のひとつとしても知られています。
その内容は、闇夜に火の玉がゆらゆらと見えるというもの。
嫁入りをするように姿を消してしまう陽菜。
これまでの楽しい時間が、まるで狐に化かされていたように感じる穂高。
穂高と陽菜が分かれてしまう舞台に、この伝承が伝わる池袋が選ばれたのも偶然ではないのかもしれません。
人身御供
陽菜の犠牲と共に異常気象から解放された東京でしたが、穂高の強い願いにより陽菜が帰ってきます。
すると東京は再び豪雨に見舞われ、その姿を大きく変えることになりました。
陽菜が犠牲になるか、東京が犠牲になるか。
本作のテーマに人身御供が含まれていることは間違いなさそうです。
人身御供とは?
人身御供(ひとみごくう)とは、人間を神への生贄にすることです。
実際に命を落とさなくても、理不尽な理由で誰かが犠牲になる比喩表現としても使われていますね。
先ほどご紹介した「掃晴娘」の伝承も、人身御供の一種と考えられます。
世界中で昔から行われてきたようですが、社会が近代化するとともに終息していきました。
ただ、人形や食品などを代用することで現在でも風習として残っています。
東京湾の埋め立てとの関連
3年が経過した本作のラストシーンでは、豪雨により東京の大部分が水没した様子が描かれています。
そして「晴れ女」の仕事で出会った老婆・立花富美は「水没した地域は江戸時代以前は海だった場所だから、それが元に戻っただけ」と言っていますね。
実際に江戸時代より東京湾の埋め立て工事は始まっていて、現在の東京駅の八重洲辺りももともとは海だったようです。
「八重洲」という地名にその名残があります。
海の埋め立てという非常に過酷な工事の為、犠牲となった方がいたことは想像に難くありません。
現在の東京は、これまで困難に立ち向かった人々の命で支えられているという考えもできると思います。
陽菜が「天気の巫女」から解放されたことで、これまで人柱となった人々も一緒に解放したという見方もできるのではないでしょうか。
その結果東京は水没しましたが、富美さんの言うように元の姿に戻っただけという解釈ができます。
新海誠はなぜ積極的に伝承を採り入れるのか?
ご紹介したように、今作はさまざまな伝承からインスピレーションを受けて制作されています。
また新海誠監督の前作「君の名は。」でも、同様に様々な伝承が取り入れられていました。
これは新海監督もインタビューで自ら認めており、意識的に行っているとのことです。
本作の中でも、鳥居やお盆など、昔から続いている風習や昔話を題材にしていますよね。
これらは監督自身が幼いころから触れてきたもので、実感を持って掘り進められるからという理由があるようです。
本作を観て感じる圧倒的なリアリティは、このようなバックボーンのもとに製作されているからかもしれません。
「天気の子」が深いレベルで訴えかける理由が伝承から見えてくる
以上、映画「天気の子」の元ネタと思われる伝承をご紹介しました。
「なあんだ、てるてる坊主かあ」と思っても、調べてみると想像以上に深く物語につながってくる背景が見えてきたりします。
これらを踏まえて改めて鑑賞すると、また違った印象を受けるかもしれません。
また、本作にはこれ以外にもたくさんの考察できそうな設定があります。
あれこれと妄想を膨らませて、本作の世界観を存分に楽しんでみてはいかがですか?
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