映画「天気の子」の最後に突然登場する二つの単語。
「東京農工大学」と「アントロポセン」
これらは一体何の事だろうと疑問に思った方も多いのではないでしょうか?
劇中ではしっかり目に留まるように描かれているにもかかわらず、詳しい描写は一切ないこの二つの単語。
今回は、帆高の進学先と彼が学ぼうとしていること、そして「アントロポセン」という言葉について考察しました。
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帆高の進学先は東京農工大学?
農工大の登場場面
物語の最後、高校を卒業した帆高が東京農工大学のパンフレットを見ている場面が描かれています。
小説版では大学名は明らかになっていませんが、農学部に進学することが述べられています。
農工大はどんな大学?
東京農工大学は、東京都の府中市と小金井市にキャンパスを構える国立大学です。
その名の通り農学部と工学部だけで構成されており、少人数制での教育をしていることで知られています。
1949年に創立され、全身の専門学校を含めると150年近い歴史を持つ大学です。
数々の有名人も輩出しており、ゲスの極み乙女。の川谷絵音さん・休日課長さん、お笑い芸人・ハマカーンの二人が特に有名とのこと。
帆高の専攻学科は?
東京農工大学の農学部には、以下の学科があるようです。
- 生物生産学科
- 応用生物学科
- 環境資源科学科
- 地域生態システム学科
- 共同獣医学科
帆高は「地域生態システム学科」を専攻したと思われます。
地域生態学とは、地域生態学の仕組みや在り方を考え、地域環境を構成しているものや人間の行動がもたらす影響などについて解明する学問です。
そして解明した要素を、地域環境の保全と再生に活かすことを目的としています。
また、東京農工大のホームページには以下のように記載があります。
森林、農村、都市などを含む空間をひとつの「地域」として捉え、そこに広がる生態系や生産・
社会に着目した新しい研究を展開。 自然環境と人間社会の生産活動が共存する地域環境空間の設計に挑 戦します。
「自然環境と人間社会の生産活動が共存」というのがキーワードとなりそうです。
帆高は何を学びたいのか
陽菜と共にした一連の行動で、東京の地形は大きく変わりました。
帆高は自分がしてきたことを改めて見直すため、また大きく変わった東京に対して自分が出来ることを学びたいと考えたと思われます。
小説版には「気候が変わってしまった今の時代に必要なことを学びたかった」と記載があります。
具体的には、以下のようなことについて学ぼうとしていたのでは。
- 自然環境と人間社会の共存について
- 人間が地球に与える影響
- 人為的な気候変動・地球温暖化の問題と解決策
そしてこれらを結びつけるキーワードが、劇中にも現れる単語「アントロポセン」です。
「天気の子」の核心概念”アントロポセン”
アントロポセンの登場場面
帆高が読んでいた大学のパンフレットに記載されていました。
どうやらカップラーメンを食べながら読んでいたようですね。
そのパンフレットには以下のような見出しが付けられていました。
- 新たな地質年代の教育
- 今、求められる農学の未来的観点
アントロポセンとは?
アントロポセンとは、地質学における一番新しい地質年代の事。日本語では「人新世」や「新人世」と表記されます。
1938年には早くも初期概念が唱えられており、60年代には旧ソビエトの科学者たちが新しい地質時代として研究を開始。
そして2000年代に入り、大気化学者のパウル・クルッツェンによって世界中に広まったとされています。
クルッツェンは、直近数世紀の人類行動の影響が新たな地質時代を構成するほど重要であると考えました。
数千万年後にも人類が存在していたら(もしくは同じくらいの知的生命体がいたとしたら)、人類誕生後の地層は「アントロポセン」と呼ばれ、急激な発展があった年代として研究されるのかもしれませんね。
帆高が興味を示した理由
先ほどもご紹介した通り、小説版で帆高は「気候が変わってしまった今の時代に必要なことを学びたい」と述べています。
これは、陽菜を助けたことによって東京の異常気象を継続させてしまった、自責の念からによるものではないでしょうか。
また、「陽菜に会いに行く理由、自分が陽菜にできることを知りたい」とも語っています。
警察に捕まって以来一度も陽菜に会っていない帆高は、彼女に会うための理由を探していたのかもしれません。
そして自分以上に責任を感じているであろう陽菜を慰めるため、アントロポセンについて学ぼうとしたのでは。
つまり、陽菜がしたことは間違っていなかったという証明をするために大学進学を決めたのかもしれません。
しかし、この帆高の考えはラストシーンで覆されることになります。
「もともと海だったんだよ」
大学進学にあわせて東京に戻ってきた帆高は、久しぶりに「晴れ女サービス」のサイトを開きます。
すると、そこには以前会った立花富美からの依頼がありました。
そして帆高は富美に会うために、彼女の住む高島平へ向かいます。
富美がもともと住んでいた家は豪雨により海へ沈んでいました。
複雑な心境の帆高に、彼女は次のように呼びかけます。
「東京のあの辺は、もともとは海だったんだよ」
富美が言うには、江戸とはもともとは「入り江の戸口」という意味だったとのことです。
それを人間と気候が少しずつ変えていったのでした。
富美は、それが元の姿に戻っただけだと言います。
帆高はこれと同じような事を、このあと再び聞きます。
それは、須賀の「世界はもともと狂っている」というセリフです。
富美と須賀が言うことは、アントロポセンの考えと同じです。
元々海だった場所が人間により陸地になった。
そして再び、人間の手にによって海に戻っただけということです。
帆高や陽菜にとっては心が軽くなる考えですが、環境問題に対して無責任な考えとも取れるかもしれません。
新海誠監督が「天気の子」に込めたメッセージ
そして本作のラストで、帆高は陽菜と再会します。
その直前、帆高は「世界がこうなったのは誰のせいでもない」と陽菜に伝えるつもりでした。
しかし陽菜を見かけた彼はその考えを改めることに。
帆高は「僕たちが世界を変えたんだ」と確信します。
そして陽菜に「僕たちは大丈夫」と伝えるのでした。
環境問題としての「天気の子」
異常気象を取り扱っていることからも、本作が環境問題をテーマの一つとしていることは明確です。
さらに富美や須賀の発言は、環境問題の解決を先送りにしてきた大人たちに対する皮肉とも取れそうですね。
しかし、本作には環境問題に対して前向きなメッセージも含まれているのではないでしょうか。
元々海だった場所が人間の手によって埋め立てられ、そして再び人間の手によって海に戻った東京。
これは、今後の地球環境は人間次第で変えていく事が出来るということを表しているのかもしれません。
最後に帆高が改めた考えと、「僕たちは大丈夫」というセリフも非常にポジティブだと思います。
若者へのエール
また環境問題に限らず、これからの時代を生きる若者へのエールも含まれているように感じます。
人類に大きな影響を与えた帆高と陽菜の行動と、その後の二人の姿を通して「自分の人生は好きなように選ぶ事が出来る」というメッセージを伝えているのではないでしょうか。
また小説版のあとがきで、新海誠監督は次のように書いています。
「映画は模範的である必要はないし、それが人生の糧になる。本作は生の実感を、道徳とも教育とも違う水準で描いた。」
帆高と陽菜の行動はすべてが褒められるものではないかもしれません。
しかし二人が「自分の人生を好きなように選んだ」ことは間違いないと思います。
「ライ麦畑」からアントロポセンへ
本作では、冒頭と最後に似たようなシーンが描かれています。
それは、本とカップラーメンが描かれた場面です。
冒頭では東京の漫画喫茶での食事のシーンで、食べる前のカップラーメンの上に小説「ライ麦畑でつかまえて」が乗せられています。
そして物語の最後には、食べ終わった後のカップラーメンと「アントロポセン」について書かれた大学のパンフレット。
これは、作中で帆高が成長したことを表現しているように思います。
読んでいる本は大人と社会への反抗を描いた「ライ麦」から、自分が暮らす社会の未来を考えた「アントロポセン」について書かれた書物へ変化。
そして、カップラーメンは帆高の人生経験と時間経過の比喩表現ではないでしょうか。
つまり、作品を通してカップラーメンを食べ終えた(=大きな人生経験をした)帆高は成長をした。
彼が大人や社会に抱いていた反抗心は、自分自身に向かうようになり、
須賀や富美の言うことに流されず自分自身で結論を導き出す事が出来るようになったと考えられます。
新海誠監督の伝えたいメッセージは、以上のようなものだったのではないでしょうか。
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